最近の人は「クーラー」のことを「エアコン」って呼ぶけど、もしかしてクーラーは死語なの?いえいえ、そうではありません。実はクーラーとエアコンは単なる呼び方の違いだけでなく、定義にも明確な違いがあるのです。
今回はクーラーとエアコンの違いについて解説します。
クーラーは「冷房」専門の装置
クーラーとはcoolerのことで、冷房機能のみを備えた装置のことを指します。一方、エアコンはair conditioner(エア・コンディショナー)のことで、冷房機能に加えて暖房機能も備えているのが特徴です。
現在、家庭に普及しているものはほとんどが冷房と暖房の両方の機能を持っていますので、「エアコン」という呼び方がふさわしいといえるでしょう。
エアコンを「クーラー」と呼ぶ人がいるのはなぜ?
クーラーからエアコンへ呼び方が変わったのはいつ頃でしょうか。
1960年(昭和35年)に日本で初めて冷房と暖房の両方の機能を備えた装置(エアコン)が発売されました。そして1965年には名称が「ルームクーラー」から「ルームエアコン」へと変更され、JIS規格も新たに制定されました。
エアコンが急速に普及する1970年代頃までは冷房機能のみのルームクーラーが主流であったことから、エアコンという呼び方自体が存在していなかったと推測されます。
(出典:一般社団法人 家庭電気文化会「家電の昭和史」)
エアコンの仕組み
そもそもエアコンはどのようにして冷房運転や暖房運転を行っているかご存知でしょうか。
エアコンは室内機と室外機がセットになっており、この2つは配管でつながっています。そして配管の中には「冷媒ガス」が充填されており、気体や液体に変化しながら空気中の熱を運ぶ役割を担っています。
冷房のとき
室外機側で低温の液体となった冷媒ガスが室内機へ移動し、熱交換器を冷やします。
室内機で取り込まれたお部屋の空気は、熱交換器で熱だけが冷媒ガスに移り、室外機へと運ばれます。熱を奪われて冷たくなった空気はお部屋に戻されます。
室外機に移動した冷媒ガスは効率よく熱を排出できるように圧縮機でさらに高温・高圧な気体となり、室外機の熱交換器を通じて外に放出されます。これは熱が多い方から少ない方へと移動する原理を利用しているためです。
イラスト:
パナソニック「室外機の仕組みと設置場所やメンテナンスの注意点」
暖房のとき
暖房時は冷房時と逆の動きをしています。
室外機の熱交換器が、外の空気から熱を集めます。集められた熱は、圧縮機で高温・高圧な気体となった冷媒ガスによって室内機へと運ばれ、室内機の熱交換器を温めます。温められた熱交換器からファンによって温風をお部屋に放出します。
またお部屋の冷たい空気は冷媒ガスによって室外機に送られ、外に放出されます。このようにエアコンは冷媒ガスによって空気中の熱を移動させることで温度の調節を行っています。
まとめ:エアコンは冷暖房機能を備えた装置
クーラーとエアコンの違い、エアコンの仕組みについて解説しました。エアコンとクーラーは呼び方が違うだけでなく、製品として別物だと考えて良いでしょう。
ちなみに、冷房機能のみのクーラーがもうなくなったわけではなく、「ポータブルクーラー」や「スポットクーラー」といった製品は存在しています。これらの製品は工事不要で手軽に使えることから根強い人気があります。
エアコンは空気中の熱を冷媒に乗せて移動させることで温風や冷風を出しています。エアコンの仕組みを知っておけば、エアコンを効率よく使用することもできるでしょう。